アフリカの密林に住むピリミー族(ピグミー族のパロディ)大酋長の息子である黒べえが、ジェット機を大きな鳥と勘違いし、捕らえようと車輪にしがみついたものの日本上空で力尽きて落下し、落ちた先=佐良利家で看病されたことを機に、佐良利家に恩返ししようと得意の魔法や呪術で騒動を巻き起こす、というギャグタッチの物語。
本作は藤子作品としては珍しくテレビアニメ化企画が先行した作品で、過去『オバケのQ太郎』など一連の藤子作品を手掛けてきた東京ムービーが制作を担当。藤子はストーリーと漫画連載を担当した。また、このキャラクターの原案は宮崎駿によって考えられたものである。ただし、宮崎が出したアイデアは「アイヌ神話のコロポックル(ホビット)と人間の交流を描く」という、本作とは全く異なるものだった(佐藤さとるの『コロボックル物語』シリーズに酷似)。それを楠部三吉郎が「アフリカの原住民」という形に翻案した。
テレビの企画先行という事情もあり、藤子は「なかなかキャラクターに感情移入出来なかった」と後に語っている。
筆者の宝物
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連載〜休載
漫画連載はアニメ版に合わせて1973年3月から同年12月まで、小学館の学習雑誌(『よいこ』、『幼稚園』、『小学一年生』 – 『小学五年生』)と毎日新聞(大阪版夕刊)に連載されたが、長らく単行本は発売されず、同じ藤子・F・不二雄原作のギャグ漫画『バケルくん』第2巻の巻末に一部が同時収録されたに過ぎなかった。1988年に中央公論社より発刊された藤子不二雄の作品集藤子不二雄ランド第175巻として1冊に収録されて出版。
1989年7月に黒人差別をなくす会が、同じく藤子作品である『オバケのQ太郎』の「国際オバケ連合」の回の描写が黒人差別であると指摘。これを受けて、藤子プロ、単行本を出版していた小学館、中央公論社は、『オバケのQ太郎』の当該エピソードが収録された単行本を増版中止・回収措置をとったが、この際に余波や後難を避けるため、抗議や指摘がなかった本作を同時に自主回収したと見られている。その後、本作を「封印」扱いにし、単行本は絶版、『バケルくん』第2巻に収録された一部エピソードや藤子不二雄の漫画百科なども別作品に差し替え、アニメ版は放送を自粛し、事実上闇に葬られてしまった作品となった。なお、自主回収について出版社による公式な説明はなされておらず、公には単なる「販売元品切れで重版は未定」として扱われている。本作の出版がなされなくなった経過についてライターの安藤健二が取材を行い、『国際オバケ連合の抗議を受けた出版元が「黒人差別をなくす会」の背景に部落解放同盟などの同和団体があると思い込んで萎縮し、自主回収の形で葬ったようである』との結論に至ったが、関係者の証言を得て事情を明らかにするまでには至らず、依然詳細は不明のままである。
作者愛用の品々
復刊
以上のように、長らく絶版の状況が続いていた作品であったが、藤子・F・不二雄大全集(第一期)の一冊として、2010年5月25日に全1巻で発売された。単行本未収録であった作品も含めて一冊に纏められており、上記のクレームに対しては他の単行本と一律の扱い(巻末に「読者のみなさまへ」という断り書きを掲載)である。巻末解説はアニメ版で黒べえの声を担当した肝付兼太。告知チラシでは著作権上の問題などで絶版状態だった『オバケのQ太郎』と共に黒べえが目立つ位置に描かれ、復刻をアピールしていた。
アニメ本編に関しても、権利元(東京ムービー)は、「差別的だ」というクレームに対応できるメーカーが名乗り出ればメディア化は可能とはしているが、現時点で再放送及びソフト化の予定はない(1979年放送『ドラえもん』以前の藤子・F・不二雄原作のアニメがメディア化されたり、近年に揃って再放送されたことは今までにない)。アニメの黒べえの出演は藤子不二雄ランドのCM以降しばらくの登場はなかったが、2011年にはドラえもんED『F組あいうえお』で他の藤子キャラクターと共に新作映像で登場している。なお、主題歌は現在もアニメ主題歌オムニバスなどで入手可能であり、稀にテレビでも流れることがある。各社のカラオケや着信メロディにも収録されている。